こんなに簡単!魅力的で説得力のある文章術(11)
こんにちは、アイデアマン養成コーチの寺ちゃんです。
アイデアマン養成所の喫茶室で、ひらめき先輩、
新入社員のアイちゃん、デアくんの三人が雑談をしています。
ひらめき先輩
「今回は、レトリックのそとつ、曲言法(きょくげんほう)を
学びます」
アイちゃん
「これもあまり馴染みのないレトリックですね」
デアくん
「初耳です」
ひらめき先輩
「確かに。僕も名前は初めて聞きました。曲言法とは、
伝えたい意味の反対の表現を否定することによって、
伝えたい意味をかえって強く表現する手法のことです。
この曲言法を緩叙法のひとつとして扱う場合もある
ようです」
アイちゃん
「なになに、『伝えたい意味の反対の表現を否定する
ことによって・・』、もう、これだけで分からなく
なっちゃった」
デアくん
「まず、伝えたい意味の反対の言葉を選んで、今度は、
その言葉を否定する?」
ひらめき先輩
「二人とも、そんなに律儀に考えなくても大丈夫ですよ。
例文を見れば一目瞭然です」
アイちゃん
「だって。説明さえ理解できないんですもの・・」
デアくん
「ほんと。どうしてこういうものって、難しい言葉ばかり
使うんだろうね?」
ひらめき先輩
「じゃ、例文、行くよ」
アイちゃん
「はーい。お願いしまーす」
デアくん
「お願いしまーす」
ひらめき先輩
「例えば、『彼女のセンス、いいね』と言いたいとき、
『彼女のセンス、悪くないね』と言ったりするでしょ?
こう表現することで、意味が強くなるということです」
アイちゃん
「えっ、そのこと?」
デアくん
「なーんだ。簡単じゃない」
ひらめき先輩
「でしょう? 『いいね』の反対が『悪いね』。次に、
『悪いね』を否定すると、『悪くないね』となる」
アイちゃん
「そういうふうに考えると、余計に分からなくなっちゃう」
デアくん
「ふだん使っているのにね」
ひらめき先輩
「じゃ、問題出すよ。『あいつは利口だ』を曲言法で
言い換えてみてください」
アイちゃん
「えーと、『あいつは・・利口じゃない』じゃなくて」
デアくん
「『あいつはバカじゃない』ですか?」
ひらめき先輩
「デアくん、当たり! クイズじゃないってか、ハハハ」
アイちゃん
「あっ、そうか。理屈で考えるとダメね」
ひらめき先輩
「じゃ、『あれは高い買い物だった』を言いかえると?」
アイちゃん
「『あれは・・安くない買い物だった』?」
デアくん
「いいんじゃない?」
ひらめき先輩
「それでいいですよ。じゃ、『そんなことをやるなんて、
愚かだ』は?」
デアくん
「『そんなことをやるなんて、賢くない』」
ひらめき先輩
「悪くないですよ。ということで、きょうはここまでと
します。次回は、同語反復法(どうごはんぷくほう)です。
お楽しみに」
参考文献:日本語のレトリック―文章表現の技法 (岩波ジュニア新書)