【誕生秘話】会社を救った『ごきぶりホイホイ』。
こんにちは、アイデアマン養成コーチの寺ちゃんです。
アイデアマン養成所の喫茶室で、ひらめき先輩、
新入社員のアイちゃん、デアくんの三人が雑談をしています。
デアくん
「アイちゃん、あくびばかりしてるけど、
きのうは帰りが遅かったの?」
アイちゃん
「そうじゃないの。きのうの夜、
ゴキブリを見つけてから眠れなかったのよ」
デアくん
「ゴキブリか・・。僕もニガ手だな」
ひらめき先輩
「ゴキブリといえば、きょうはアース製薬の
『ごきぶりホイホイ』の話をしようと思ってた
ところです」
アイちゃん
「へぇ、ひらめき先輩、すごい。
何か予感がしたんですか?」
ひらめき先輩
「そんなことはないけど。
『ごきぶりホイホイ』も1973年の発売だから、
かなりのロングセラー商品だね」
デアくん
「うちも使ってますよ、それ」
ひらめき先輩
「それが発売される前は、両サイドに
内側向きのフラップを付けた長方形の箱で、
餌でゴキブリを誘い込み、入ると出られなく
なるという仕組みのもの。この方式だと
容器の中で動き回るゴキブリが丸見えで、
しかも自分でゴキブリを殺さなければ
ならなかったんです」
アイちゃん
「うわー、そんなのムリ」
ひらめき先輩
「そこで、それらのマイナスの部分を改良し、
安全で手軽に処理できるものを作ろうと、
この開発が始まったんです」
デアくん
「消費者ニーズに応える商品開発だよね」
アイちゃん
「それで誕生したのが、『ごきぶりホイホイ』なのね」
ひらめき先輩
「最初の頃は、粘着シートではなくて、
チューブ入りの粘着材が付いていて、
買った人が使うときに塗っていたんですよ」
デアくん
「当時は、まだ粘着シートがなかったんだ・・」
ひらめき先輩
「それまでは粘着材も使っていなかったんです。
粘着材を使うヒントになったのは、
開発者のリーダーだった西村昭さんが、
アメリカの家庭用品雑誌に載っていた
『ワンダーラットボード』という商品の広告を
見て思いついたそうです」
アイちゃん
「それって、異なる要素の中に関連性を見い出す
という、アイデアを思いつくときの典型ですよね、
ひらめき先輩?」
デアくん
「僕も、いま言おうと思ったのに・・」
ひらめき先輩
「そのとおり。よく気づいたね、二人とも。
その商品はネズミ捕りの一種で、誘因剤を含んだ
粘着シートでネズミを捕獲するものなんだけど、
当時はまだ粘着シートは技術的にムリがあったので、
チューブ入りの粘着材にしたそうです」
ひらめき先輩
「商品名は、最初は違うものだったんですよ」
アイちゃん
「どんな名前だったんですか?」
デアくん
「ごきぶり地獄とか・・」
アイちゃん
「あ、それいいかも・・」
ひらめき先輩
「(笑)・・うまいうまい。
最初は、社内公募で決めた『ゴキブラー』と
いう商品名だったそうです。当時の社長さんは、
その名前はおどろおどろしいから、
もっと親しみのある名前がいいということで、
ご自分で『ごきぶりホイホイ』という名前を
考えたらしいですよ」
アイちゃん・デアくん
「社長さんが・・」
ひらめき先輩
「価格は、当初は250円の予定だったそうですが、
これも社長さんの指示で変更になりました。
社長さんの考えは、
『商品の価格は原価で決まるものではなくて、
消費者に与えるメリットによって決まるもの。
この商品にはそれくらいの価値があるから、
450円にしなさい』ということだったそうです」
デアくん
「さすが、社長さん。いいこと言いますね」
ひらめき先輩
「じっは、アース製薬は、1970年に会社更生法を
適用されて大塚製薬に買収されました。
この収益率が高い『ごきぶりホイホイ』の大ヒット
のおかげで、3年あまりで再建に成功したそうです」
アイちゃん
「アイデアがヒット商品をつくり、
ヒット商品が強い会社をつくる。ということですね」
ひらめき先輩
「はい、きょうのお話はここまで。
読者の皆さんも、最後までお読みいただき感謝します」